排卵誘発剤

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排卵誘発剤

妊娠するためには、まず「排卵」が起こっていないと何も始まりません。その排卵がうまく起こっていないという時のために使われるのが「排卵誘発剤」療法です。
これは服用するものや注射で直接体内に取り込むものですから、副作用があることも知っておきましょう。

排卵誘発剤って?

排卵誘発剤というのは、不妊治療ではよく使われることのある、その名の通り排卵を引き起こすための薬です。

排卵誘発剤は飲み薬タイプと注射薬タイプとに分けることができるのですが、まずは飲み薬からスタートして、それでも効果のない場合にはより効果の強い注射タイプを使うのが一般的です。
最もポピュラーな排卵誘発剤として、飲み薬タイプの「クロミフェン」というものがあります。

排卵誘発剤の第1段階クロミフェン療法

この「クロミフェン療法」ですが、卵胞を発育させるために必要となるゴナドトロピンを分泌させる効果があるため、排卵を促してくれるという薬です。
クロミフェン療法は、軽度の排卵障害である「第1度無月経」という状態に効果的だと言われています。

生理が始まってから5日目にこのクロミフェンを服用し始め、5日間ほど毎日飲み続けることでクロミフェンを飲み始めてから12〜14日目には、なんと70〜80%もの確率で排卵が起こります。これを利用して妊娠できる人は10〜30%程度になっているようです。
とても高い排卵率ではありますが、妊娠率はあまり高くないようです。この理由として挙げられるのが、クロミフェンの副作用にあります。クロミフェンはエストロゲンというホルモンの分泌を抑えてしまうために、受精卵を迎えるのに必要な子宮内膜が厚くならなかったり、頸管粘液が少なくなってしまうことがあります。
体外受精や人工授精ならば頸管粘液が多少少なくても影響はあまりないのですが、子宮内膜が薄いという場合は、通常に比べて妊娠率がなんと半分以下になってしまうことがわかっています。

排卵誘発剤の2段階目ゴナドトロピン療法

クロミフェン療法でも効果が見られなかった場合、次のステップである「ゴナドトロピン療法」に移ります。
これは、hMG(ヒト閉経ゴナドトロピン)とhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)という2種類の排卵誘発剤を使用するもので注射での療法になります。

<hMG(ヒト閉経ゴナドトロピン)>
卵巣に直接働きかけて卵胞を育て、成熟させていく効果があります。一方で、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群などの副作用が起こる場合も。具体的には「HMG日研」や「ヒュメゴン」という商品があります。

<hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)>
育った卵胞に働きかけて、排卵を起こしてくれる効果がある薬です。こちらもhMGのように副作用が起こる可能性が。
具体的には「プレグニール」などの商品があります。

ゴナドトロピン療法は、これら2種類の排卵誘発剤を組み合わせて排卵を起こすものです。排卵率だけを見ると約90%と非常に高確率になりますが、その反面で副作用が起きる可能性もあるため十分に注意しながら使わなければなりません。
また、1週間程度毎日hMGを注射する必要があるため、そのぶん通院も毎日しなければならないので手間もかかりますし痛みも伴います。卵胞が順調に成長しているかどうかを毎日検査しなければなりません。

卵胞が順調に成長しているのがわかったら、次に排卵を起こすためのhCGを注射します。排卵誘発剤であるhCGを注射すると、48時間以内に排卵が起こりますのでそこを狙ってタイミング法や人工授精を行っていきます。

排卵誘発剤で起こる副作用とは?

排卵誘発剤を利用するには副作用に注意しなければ、と言いましたがどんな副作用があるのでしょうか?
具体的には、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)というものがあります。自然妊娠においては多胎妊娠になる発生率がわずか1%、クロミフェン療法でも約5%ほどなのに対し、hMG療法の場合はなんと20%にもなると言われています。

もうひとつの卵巣過剰刺激症候群ですが、これはhCGを注射した後に起こってしまうもの。排卵を誘発することで卵胞がたくさん育ちますが、刺激された卵巣が10センチ以上に腫れ上がってしまったり腹水が溜まってしまったりする副作用です。
クロミフェン療法の場合ならこれはほとんど起こらないのですが、ゴナドトロピン療法ではその強力な薬の影響で10%程度に発生してしまいます。

排卵誘発剤を利用した療法を行うのであれば、こういった副作用などのリスクについてしっかり説明してくれる病院を選ぶことが大きなポイントです。

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