あなたの周りには、妊娠・出産された方がどれくらいいますか?
お友達、ご家族、パートナー、職場の仲間、はたまた、あなた自身?
妊娠・出産というのは、妊娠・出産する本人だけでなく、その周りの人にも影響する一大イベントです。
たとえば、マタニティブルーになっている妊婦さんがいれば、周りの人のサポートが大切になってきます。
マタニティブルー、それは、「待望の赤ちゃんが産まれて嬉しいはずなのに、突然、不安になったり、戸惑いを感じること」です。
自分の大きくなっていくお腹を見て、「赤ちゃんはすくすく育っているのかな?」「無事に出産できるのかな?」「自分の身体は大丈夫なのかな?」そういう悩みから不安になるようです。
マタニティブルーになる原因はいくつかありますが、たとえば、「周りが自分のことを気遣ってくれない」という外的なことや、「妊娠による体調の変化」という内的なことが原因だったりします。
たとえば、妊娠中は歯が痛くなったり、腰痛や痔になりやすかったりするって、ご存じでしたか?
妊娠・出産は、その本人だけでなく、周りの気遣いやサポートもとっても大事。
もし、あなたが妊娠・出産を経験していなかったとしても、周りにそういう人がいるのであれば、「大人のマナー」として、ぜひ、今回のノウハウを覚えておいてください。
今回のノウハウは「新しい命を守るためのノウハウ」です。
これからママやパパになる人だけでなく、すべての人に読んでもらえるとうれしいです!
妊娠中の体調管理
妊娠中は様々な体調の変化が起きます。
特に、これからご紹介する「5つの変化」については覚えておいてください。
1、「つわり」が起こる
「つわり」の症状や原因って?
「つわり」とは、妊婦が妊娠2~4カ月頃に起きる、むかつき・吐き気・食欲不振・嘔吐、そして、嗜好の変化や胸やけが起きる状態のことを指します。
つわりは医学用語で「悪阻(おそ)」とも呼ばれます。
つわりは、卵巣から出てくる「女性ホルモン」の変化によって起こるといわれており、妊娠5~6週から出現して、12~15週頃にはなくなります。
軽減対策や注意すべき点は?
つわりの時でも、一日のうち、調子のいい時間帯と、調子の悪い時間帯があります。
安定期になれば、症状はだんだんと軽くなり、必ず治りますが、ストレスが原因で悪化する場合もあります。
残念ながら、つわりの吐き気・嘔吐を治す安全なお薬はありません。
つわりの状態は「二日酔い」と似ています。
胃がムカムカしますので、温かい食べ物やニオイのきつい食べ物は避けましょう。
また、胃のムカムカをできるだけ避けるために、胃を空腹にしない、満腹にしないことをオススメします。
1日3食しっかり食事するよりも、たとえば、1日に10回くらいに分けて少量ずつ食事をするとよいでしょう。
ちなみに、尿に「糖」や「ケトン」が出現してくると、治療が必要な状態なので、気をつけてください。
つわりが強い場合は、我慢をせず、病院で診てもらうようにしてください。
つわりが歯を悪くする!?その理由は?
実は、つわりの期間中、歯が悪くなることがあります。
その理由は以下のとおりです。
つわりにより、食生活が不規則となる
酸性の食品を食べることが増える
つわりで吐いた時の胃酸が歯を溶かす
歯ブラシを口の中に入れると気持ち悪くなるため、ブラッシングが困難になる
つわりの期間中は、歯のケアにも気をつけるようにしてくださいね。
2、「妊娠高血圧症」に注意する
妊娠高血圧症の症状って?
「妊娠高血圧症」とは、妊娠前は高血圧ではなかった方が、妊娠20週から分娩後12週までに高血圧になってしまう病気を指します。
昔は「妊娠中毒症」という呼び方もされていました。
妊娠20週目以降になると、お腹の赤ちゃんへ送る血流量が増えます。
その際、通常は、血管が血流量に合わせて拡張するのですが、人によっては血管が拡張しないことがあり、その結果、高血圧になる・・・、それが妊娠高血圧症です。
この妊娠高血圧症、重症の場合はおなかの赤ちゃんに酸素や栄養がうまく届かなくなり、妊婦さんの腎臓・肝臓にも負担がかかったりと、母子ともにリスクが高くなる危ない病気です。
妊娠中毒症
この病気は予防ができず、妊婦さんの5~7%の方がかかるといわれています。
また、約1%の方は重症になるともいわれています。
この病気にかかってしまうと、妊娠中、急激に血圧が上がった際、けいれん発作や脳出血を起こしたり、分娩の際に大量出血を起こします。
最悪の場合、出産で亡くなってしまうこともあります。
また、胎盤の働きが悪くなるため、お腹の赤ちゃんの成長にも悪い影響が出てしまうんです。
妊娠高血圧症は、一度かかってしまうと治療が難しいといわれています。
予防する意味でも、以下の対策を覚えていただいて、妊婦さんをサポートしてあげてくださいね。
対策や注意すべき点は?
重要なのは、塩分やカロリーを制限した食事療法と、ストレスがかからない生活を送ることです。
疲れがたまるようなことは極力避け、「ああ、疲れたなあ・・・」と思ったときは、適度に休むようにしましょう。
なるべく自分のペースで、ゆったりと過ごすようにしてくださいね。
また、マタニティウェア(妊婦服)も取り入れてみてください。
ウエストを締めつけないデザインなので、リラックスして生活ができます!
もし、危険が予測されるほど高血圧になってしまった場合は、入院での経過観察が必要です。
入院の経過によっては、赤ちゃんが未熟な状態でも帝王切開をおこなわざるをえないこともあります。
3、「便秘」や「痔」になりやすい
妊娠時は「便秘」、そして「痔」になりやすい
妊娠すると、「便秘」になる人が増えます。
その理由は大きく分けて三つあります。
妊娠中にたくさん分泌される女性ホルモンの影響で、腸の動きが鈍くなるから。
妊娠で大きくなった子宮が腸を圧迫するから
妊娠中は運動不足によりやすいから
そして、この便秘によって、肛門および肛門部周囲の静脈が圧迫され、血液の流れが悪くなると、今度は「痔」が発生します。
(子宮が大きくなると静脈がうっ血しやすくなり、「いぼ痔」もできやすくなります)
ちなみに、出産経験のある女性の7割くらいの方が痔の経験があるそうです!
対策や注意すべき点は?
痔を防ぐためには、とにかく便秘を予防すること!
以下の四つの対策を知っておいてください。
食事や冷えなどに注意する
安定期に入ったら積極的に運動する(マタニティビクスや散歩など)
便秘を予防する
おしりに負担をかけない
(排便をがまんしない、5分以上便座に座らない、座るときは「ドーナツクッション」を利用する)
運動としてオススメなのは、妊娠中の運動不足を解消するために開発されたマタニティビクスです。
有酸素運動のエクササイズを多く取り入れているのが特徴で、エアロビクス、水泳・アクアウォーキングなどのアクアエクササイズや、ウォーキング、ジョギング、ヨガなど、種類も豊富です。
あなたが楽しめそうなエクササイズを選んでチャレンジしてみてくださいね。
おしりに負担をかけないことも痔の予防では重要です!
トイレに長く座っていると肛門の静脈が膨らみます。
これが痔の原因になるため、5分以上便座に座らないようにしてくださいね。
(男性の方で、痔でお悩みの場合も、便座の座りすぎには気をつけていただければと思います)
また、「ドーナツクッション」とは以下のようなクッションのことです。
イスなどに座る際、このクッションをおしりの下に敷くと、おしりへの負担を減らすことができるんです。
円座
あ、もし、便秘対策として「下剤」の服用を検討されている場合は、必ず医師に相談してくださいね。
お薬の中には妊婦が使用できないものもありますから。
また、ひどい痔になってしまった場合には、産婦人科だけでなく、専門医がいる病院の肛門科へ行くこともオススメします!
4、体重管理に気をつける
妊娠時に体重を管理しなければならない本当の理由は?
妊娠中に体重が増えすぎると、陣痛が弱くなることが多く(微弱陣痛)、その結果、赤ちゃんが産道を降りてくることができない場合があります。
また、体重が増えすぎると、単純に産道や子宮の周りに脂肪が増えますので、赤ちゃんが産道を通りにくくなってしまいます。
その結果、帝王切開をおこなうことになったり、吸引器具や鉗子などの器具を使った、赤ちゃんを引っ張り出す必要のある難産になる可能性が高くなります。
体重管理
赤ちゃんが安産で生まれるためにも、妊婦さんの体重管理はとっても大事なんです。
対策や注意すべき点は?
通常、過度の食事制限やダイエットは必要ありません。
ただ、間食などは控えた方が良いでしょう。
また、食事の栄養バランスにも気をつけてください。
大切なのは、エネルギーの元となる主食を中心に栄養バランスを考えることです。
緑黄色野菜やお肉やお魚、大豆料理を主食に組み合わせることで妊娠中に必要な栄養素をバランスよく摂ることができます。
特に緑黄色野菜は、ビタミンB群の一種である「葉酸」が含まれているのでオススメです。
葉酸は、細胞の分化に不可欠な栄養素です。
妊娠前や妊娠初期に摂ることで、「神経管閉鎖障害」のリスクを軽減できるといわれています。
神経管閉鎖障害とは、お母さんの子宮内で赤ちゃんが成長する初期の段階で作られる脳や脊髄のもとになる神経管と呼ばれる部分が、きちんとした管の形にならないために起こる障害で、遺伝などを含めた多くの要因が関係して発症するものです。
「二分脊髄」では、生まれたときに腰部の中央に腫瘤のあるものが最も多く、重篤な場合には下肢の麻痺を伴うものもあります。また脳に腫瘤のある「脳瘤」や脳の発育ができない「無脳症」などもあります。農林水産省:妊婦さんに大切なビタミン、葉酸
5、メンタル面に気をつける
メンタルが崩れやすい理由
冒頭でもお話しましたが、「マタニティブルー」という言葉があるように、妊娠中や出産後は妊婦さんのメンタル面が崩れやすくなります。
これは、女性ホルモンが激変することが原因です。
一般的に、「思春期」「更年期」「出産の前後」という三つの時期は、女性ホルモンが激変する時期にあたり、精神不安定になりやすいといわれています。
メンタル管理
●マタニティブルーでみられる症状
精神不安定
やたらと活動したがる
無気力になる
涙もろくなる
イライラする
ちなみに、よく勘違いされますが、マタニティブルーは「うつ病」ではありません。
うつ病というのは病気の一種ですが、マタニティブルーは病気ではないので、自然に治ります。
ただ、「産後うつ」という病気があります。
これは、出産後にうつ病になるケースで、これには注意しなければいけません。
産後うつを防ぐためには、妊娠中だけでなく、産後の気遣いも大事だということを覚えておいてください。
対策や注意すべき点は?
通常のマタニティブルーは自然と治りますが、「産後うつ」の状態になってしまうと、自分だけで治すのは難しくなります。
特に、産後うつを放置すると、慢性化・重症化の危険があり、育児時の「幼児虐待」などの悲劇につながる可能性も出てきます。
実は、妊娠中にうつ病になる方は、一般女性がうつ病になる確率とあまり変わりません。
軽症のうつ病が出る確率は10~15%といわれており、この確率は、一般女性がうつ病になる確率とほとんど変わりません。
ですが、出産後には、このうつ病になる確率が少し上がるといわれています。
そのため、出産後にちょっとでも様子が変だなと思った際には、周りが話を聞いてあげたり、病院への通院を進めたりと、正しくサポートしてあげることが大切です。
入院するタイミングは?
続いて、入院するタイミングについてお教えします。
一般的に、入院するタイミングは「陣痛時」と「破水時」に分かれます。
●陣痛
お腹の張りと痛みが10分間隔にくること
●破水
卵膜が破れて羊水が流れ出ること
陣痛がきた時は?
陣痛がきた場合には、できるだけ旦那さんやご家族と一緒に行動する方が良いのですが、諸事情により一人で行動しなければいけない場合、タクシーなどを利用することになると思います。
その場合、妊婦さんを含め、多くの人が気にされるのが「タクシーの座席が汚れないだろうか・・・」ということです。
そんな時にオススメしたいのが「レジャーシート」!
レジャーシートをタクシーの座席に敷けば、破水やおしるしでタクシーのシートを汚さずに済みます。
いざという時のためにも、ぜひ準備しておいてくださいね。
また、陣痛が始まったタイミングで、時計も用意すると良いでしょう。
陣痛の周期(我慢できない痛みが始まった時点をスタートとした間隔)を計るために、スマートフォンのストップウォッチや、秒針のついている腕時計などが重宝します。
出産後の産褥期間(さんじょくきかん)で気をつけること
「産褥期間(さんじょくきかん)」とは、出産後、女性の体が妊娠前の状態に戻っていくための期間のことです。
一般的に、出産後の6週~8週までを指します。
産褥期間は重いものを持ってはいけない!
産褥期間に重いものを持ってしまうと、内臓下垂の原因になってしまいます。
内臓下垂とは、腹部の内臓が下垂した状態のことを指しますが、この状態になってしまうと大変です。
腸が下がった部分に常に便がたまることで、おへその下がポッコリとふくらんだり、消化不良でありながら胃酸過多になるため、ガスやゲップが増えたり、挙げ句の果てには全身が冷え性になって、子宮が冷えて妊娠しにくくなることも・・・!
だから、内臓下垂は防がないといけません。
では、なぜ、産褥期間に重いものを持ってしまうと、内臓下垂になってしまうのでしょうか?
その答えは、「骨盤底の筋肉」にあります。
この骨盤底の筋肉、普段は子宮や膀胱を下からしっかり支えているのですが、出産後はその筋肉が緩んだ状態になっています。
そのため、出産後に重いものを持つと、下から支える力が弱いために、子宮や膀胱がギュッと押し出される形になってしまいます。
それが内臓下垂につながるんです。
そのため、出産して6~8週目くらいまでの産褥期間には重いものを持たないようにしましょう。
たとえば、赤ちゃんを抱っこする時も、お母さんは座って抱っこした方がよいのです。
赤ちゃんの抱っこを旦那さんと分担制でするのはオススメです。
産褥期間は「産褥体操(さんじょくたいそう)」をやってみよう!
実は、産褥期間に身体を動かすことを目的に考えられた「産褥体操(さんじょくたいそう)」という体操があります。
これは、妊娠・出産でダメージを受けた皮膚や靭帯、生殖器、姿勢といったものを「妊娠前」に戻すのを助けるための体操です。
今回は体操の内容まではご紹介できませんが、興味のある方は、下記のサイトからチェックしてみてくださいね。
●お母さんと赤ちゃんの生活(産褥体操)|岡山中央病院 産婦人科
http://www.kohjin.ne.jp/womens/mama/seikatsu_sanjoku.html
いかがでしたか?
妊娠・出産は女性にとっても、男性にとっても、人生の一大イベント。
そのイベントは当事者だけでなく、ご家族、親戚、友達、そして職場の仲間など、いろいろな人を巻き込んだイベントです。
多くの方が妊娠・出産に関する正しい知識を持つことで、幸せに生まれてくる赤ちゃんがもっともっと増えると思っています。
自分はまだ妊娠・出産なんて関係ないし・・・、という方も、ぜひ、「大人のマナー」として、今回のノウハウを覚えておいてくださいね。